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2012年12月

今夜野宿になりまして

アンタッチャブル柴田さんが、野宿愛好家のカメ五郎さんの指導の元、若手芸人と共にサバイバル生活を敢行するという番組のDVDが出たので、観たのですがこれが猛烈に面白くて、何度も見返しています。

私はナガレのような漫画を描くくらいなので、元々キャンプとかアウトドアものが好きで、自殺島でも抗争シーンよりサバイバルシーン(鹿の解体とか)にワクワクして読んでいます。

食べ物は全て現地調達で、野草を取ったり魚やカエルやヘビを取って食べるのですが、これがどれも美味そうなのです。よく、「人は本当に美味しいものを食べると笑いが止まらなくなる」と言いますが、柴田さんや芸人の皆さんの、「食べた時のリアクション」が本当にこれで、笑いが溢れて止められない感じなのです。グルメレポートの大袈裟なウソ臭い演技のリアクションでない、能書きより笑いが先に沸き起こる感覚。これを映像で撮った物というのを他に知りません。その点において、すごくリアルなドキュメンタリーだと思います。

野宿愛好家のカメ五郎さんが、実にいいキャラクターです。歩きながらスナック感覚で野草をつまんで食べたり、「多摩川は八百屋さん」などの名言が飛び出したり、自然科学に関して物凄い博識な一方で世事に疎く、乗り物に極端に弱いという文明人とは思えない人なのですが、彼の生き物の命を奪うときに「ありがとう」と「ごめんなさい」を忘れないと言う考え方は、文明人でも忘れてはいけないと思います。

金さえあれば何でも手に入るというのは間違いで、自分の力で手に入れた食材を自分の手で調理したものの美味しさ、そしてそれに伴うあらゆる体験というのは、決して金では買えない。自らの体を動かした者だけが手に入れられる。そういうことを改めて教えられました。そして、死ぬ時にあの世に持っていけるものは、そういう思い出だけなのではないでしょうか。

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ヤミの乱破

少し早いのですが、今年読んだ中で一番印象に残った漫画を紹介します。

巨匠細野不二彦先生の「ヤミの乱破」(イブニング連載)です。

「乱破(らっぱ)」とはスパイや忍者を指す隠語。物語は太平洋戦争終戦直後から始まります。主人公桐三五はスパイ養成学校「陸軍中野学校」出身の元日本軍スパイとして大陸で暗躍していたが、復員してみれば只の主を失った犬だった。桐は中野学校時代の先輩の元に身を寄せ、カストリ雑誌の編集者となる。しかしその先輩は「ヨハンセン」という謎の人物の司令で、占領下の日本の転覆を狙う共産主義者と戦っていた。新たな主を得た犬は再び闇の世界を駆け抜ける。それが日本のためと信じて。

実際にあった事件や、実在した有名人が出てくるリアルな戦後史を扱う一方で、ソビエトから送り込まれる「赤化戦士」とのトンデモ戦闘が素晴らしい。この「赤化戦士」はソビエトに抑留された元日本兵が、共産主義に洗脳されて送り込まれたスパイなのですが、洗脳だけでなく人体改造まで施されていて、片腕がマシンガンのヤツとか背中からプロペラが生えて空を飛びながら酸を振りまくヤツなど、まぁまるで漫画のようなトンデモ人間ばかり。史実をただ絵解きしただけの退屈な歴史漫画ではなく、一級のアクションエンターテイメントにしているのが細野先生の意欲を感じます。

終戦直後を扱った物語ですが、その物語を通して描かれるテーマや登場人物の心情は、むしろ現代の私たち、特に震災後の私たちを戯画化、皮肉化しているように見えます。連載が2005年で中断していたのが今年になって再開したのも偶然ではないように思います。アーニー・パイル編で、自分だけが生き残ってしまったことに後ろめたさを感じながら生きている女性の「目には見えなくとも足元には沢山の死体が転がっているのに…”心のいやし”だの”もののあわれ”だのと今度はこのうえ気持ちまで満腹にしないといけないの?幸せはまだ足りてないっていうの?」という血の出るような台詞は痛烈に胸に刺さりました。過去に囚われず前を向くというのは大切なことです。でも、前を向いたとたん、人は視野から外れた後ろのことを忘れてしまう。そして私たちの「快適」が「利便」が最後に何を起こしたのか忘れてしまう。しかしマゾヒスティックに自虐的に自分を責めて生きろというのではない、「自分に対しての反骨」こそが、この物語の登場人物全員の心の根底にあるように思います。

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スポ×ちゃん!年賀状企画

日ごろの応援の感謝の気持ちとして、ご希望の方に2013年のお正月に描き下ろしイラストを使った年賀状をお送りします。

追記 

多数のご応募ありがとうございました。場所によっては元日に届かない場合があるかもしれません。

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