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ヤミの乱破

少し早いのですが、今年読んだ中で一番印象に残った漫画を紹介します。

巨匠細野不二彦先生の「ヤミの乱破」(イブニング連載)です。

「乱破(らっぱ)」とはスパイや忍者を指す隠語。物語は太平洋戦争終戦直後から始まります。主人公桐三五はスパイ養成学校「陸軍中野学校」出身の元日本軍スパイとして大陸で暗躍していたが、復員してみれば只の主を失った犬だった。桐は中野学校時代の先輩の元に身を寄せ、カストリ雑誌の編集者となる。しかしその先輩は「ヨハンセン」という謎の人物の司令で、占領下の日本の転覆を狙う共産主義者と戦っていた。新たな主を得た犬は再び闇の世界を駆け抜ける。それが日本のためと信じて。

実際にあった事件や、実在した有名人が出てくるリアルな戦後史を扱う一方で、ソビエトから送り込まれる「赤化戦士」とのトンデモ戦闘が素晴らしい。この「赤化戦士」はソビエトに抑留された元日本兵が、共産主義に洗脳されて送り込まれたスパイなのですが、洗脳だけでなく人体改造まで施されていて、片腕がマシンガンのヤツとか背中からプロペラが生えて空を飛びながら酸を振りまくヤツなど、まぁまるで漫画のようなトンデモ人間ばかり。史実をただ絵解きしただけの退屈な歴史漫画ではなく、一級のアクションエンターテイメントにしているのが細野先生の意欲を感じます。

終戦直後を扱った物語ですが、その物語を通して描かれるテーマや登場人物の心情は、むしろ現代の私たち、特に震災後の私たちを戯画化、皮肉化しているように見えます。連載が2005年で中断していたのが今年になって再開したのも偶然ではないように思います。アーニー・パイル編で、自分だけが生き残ってしまったことに後ろめたさを感じながら生きている女性の「目には見えなくとも足元には沢山の死体が転がっているのに…”心のいやし”だの”もののあわれ”だのと今度はこのうえ気持ちまで満腹にしないといけないの?幸せはまだ足りてないっていうの?」という血の出るような台詞は痛烈に胸に刺さりました。過去に囚われず前を向くというのは大切なことです。でも、前を向いたとたん、人は視野から外れた後ろのことを忘れてしまう。そして私たちの「快適」が「利便」が最後に何を起こしたのか忘れてしまう。しかしマゾヒスティックに自虐的に自分を責めて生きろというのではない、「自分に対しての反骨」こそが、この物語の登場人物全員の心の根底にあるように思います。

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コメント

今度読んでみたいです!

投稿: キム | 2013年1月22日 (火) 01:39

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