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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

トラと海を227日間漂流すると言う奇想天外な物語を、美しい映像で描いたという触れ込みに期待して観に行きました。すごく面白かったのですが、同時に猛烈に疲労感を感じた映画でした。

ただ海の真ん中を漂流するというだけでも大変なストレスなのに、救命ボートに相席したのがトラ。しかも隙あらば自分を食べようとするトラ。3Dで観たせいもあると思うのですが、全編を通して主人公パイが感じるストレスを直で感じてしまいました。最後にパイが助かると言うのは判っていながら、あまりにも無慈悲に理不尽に降りかかる困難に見ている方が心が折れそうでした。

しかし、多くのことを示唆している映画でもありました。救命ボートにトラと1対1で残されたパイは、一度ボートの外に逃れるのですが、トラが追って海に飛び込みます。トラはボートに登れないので、ボートに戻ったパイは、これで一安心。と思いきや、ボートにしがみつくトラに手助けをしてボートの中に戻してしまいます。そして、魚を釣ってトラに与えて、トラを養うのです。

自分が助かることを考えたら、これは一見不合理な行動です。少ない水と食料を分け与える。しかも、自分に危害を加えるかもしれない相手に。しかしパイはそれを選んだ。それは哀れみでも慈悲でもない。自分が生き残るために他者が必要だったからです。トラがいることで、トラを養うことで少なくともパイは「孤独」という漂流生活最大の敵と戦うことから逃れられました。

もし、あなたが誰かを養わなければならない、世話をしなければならない立場の人だとしたら、「こいつさえいなければ」と思うことがあるかもしれません。しかし、そうではないのです。マイナスにしかならないような存在でも、人は誰かと共にいないと生きる力を失ってしまう。「自分以外の誰かが、ただ生きている。存在している」それだけのことが大きな希望になる。だからパイはトラと生きることを選んだのだと思います。

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